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【リーダーインタビュー】糸田 健次様・永井 美智代様|創業49年の信念「正直不動産」。TSMC効果に沸く熊本で築く、地域一番店の矜持。

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。

 

今回お話を伺ったのは、熊本を拠点に49年の歴史を誇る熊本地所株式会社の糸田健次会長と永井美智代社長です。「正直不動産」を企業理念に掲げ、エイブルネットワークの地域一番店として着実に成長を続ける同社。TSMC進出に沸く熊本で、創業50周年を前に描く100年企業への道筋について詳しく伺いました。

目次

    49年の歩みと「正直不動産」への想い

    まずはお二人のご経歴と、熊本地所に関わるようになったきっかけについて教えてください。

    ▲熊本地所株式会社 グループ取締役会長 糸田 健次 氏

    糸田様:当社は1976年10月に創業し、来年で50周年を迎えます。実は創業時は不動産業ではなく、第一美術株式会社というアートディーラーの会社を経営していました。1990年に宅地建物取引業を始めたのがスタートです。

    永井社長が入社したのは2004年で、エイブルネットワークに加盟したのと同じ年でした。永井社長との出会いですが、母親が知人で、宅建の資格を持っていると聞き、声をかけて入社してもらいました。

    永井様:入社から20年が経ちますが、糸田会長のもとで不動産業の基礎から学ばせていただきました。当社は創業49年となり、来年はいよいよ50周年を迎えます。

    糸田会長が「正直不動産」を目指すようになった背景について詳しく教えてください。

    糸田様:これは現在の経営理念にもつながる話なのですが、1990年に不動産業を始めた当時、お客様はアートディーラー時代からのお付き合いがあった富裕層のお医者様などが中心でした。

    「これから不動産業を始めます」とご挨拶に伺ったところ、「不動産屋になるのか」と怪訝な顔をされてしまいました。私が開業した頃は、残念ながら悪徳な不動産業者が多かった時代だったためです。「不動産業界にはそんなイメージがあるのか」と、少しショックを受けたのを覚えています。

    しかし、もう後には引けませんから、「不動産業は素晴らしい仕事だ」と言われるような、正直な不動産屋を目指そうと心に決めました。そういった業界の悪いイメージとは一線を画し、熊本で一番真面目な、まさに「正直不動産」を目指して、私自身も社員にもそれを求め、努力を続けてきました。

    永井社長の抜擢エピソードが印象的でしたが、そこに込められた経営哲学について聞かせてください。

    糸田様:入社から10年ほど経ち、優秀な人材を社長に据えなければ、と考えるようになりました。そんなある時、永井社長が自分のお母様のマンション売却を仲介したことがあったんです。

    驚いたことに、彼女は仲介料を1円も値引きせず、満額を会社の利益として計上していました。身内相手なら少しは割引するものだろうという先入観があったので、後からその事実を知った時は本当に衝撃を受けました。

    このエピソードが決め手となり、自己の利益より会社の利益を優先する彼女の姿勢を評価して、社長に抜擢しました。以来、彼女は売買部門を力強くけん引し、会社の売上をどんどん伸ばしてくれています。今ではすっかり任せきりで、私が出る幕はありません。

    地域密着戦略と「賃貸に始まり、賃貸に終わる」循環モデル

    熊本県内9店舗展開の戦略的意図について教えてください。

    ▲熊本地所株式会社 取締役社長 永井 美智代 氏

    永井様:現在、当社の管理戸数は8,000戸を超え、10,000戸を目標に掲げています。管理戸数が増えれば、当然ご紹介できるお部屋の数も増えますから、より多くのお客様のニーズにお応えできます。

    そのために、熊本県内で9店舗を展開し、当社のスタッフが1件1件丁寧にご案内することを徹底しています。これは、熊本都市圏全体をカバーするための地理的戦略です。熊本市内の主要エリアはもちろん、八代、宇土、菊陽といった主要な周辺都市や成長地域にも店舗を構えることで、県内でもトップクラスの集客力を実現しています。

    こうした店舗展開が雇用の創出や空き家の減少にもつながり、地域の住みやすさに貢献できていると考えています。

    「賃貸に始まり、賃貸に終わる」という独自の事業戦略について詳しく聞かせてください。

    永井様:当社の戦略は、一言でいえば「賃貸に始まり、賃貸に終わる」という不動産循環戦略です。

    例えば、賃貸事業は、進学、就職、結婚、開業など、お客様の様々な人生の節目に深く関わります。初めてのお部屋探しから住み替えまで、ライフステージに寄り添うことで、お客様やオーナー様との継続的な関係が始まります。これが「賃貸に始まる」ということです。

    そして、賃貸のお客様との関係が深まることで、将来のマイホーム購入や不動産投資といった、売買や管理のニーズも自然と見えてきます。お客様の大切なライフステージに立ち会わせていただくことで、常に最新の市場動向や入居者様のニーズを把握し、的確な資産価値の判断や売買戦略へと繋げているのです。

    そして、収益物件を購入されたお客様には管理業務をご提案し、新たな入居者様の募集を行う。こうして再び賃貸事業へと繋がっていきます。お客様のライフステージの変化に、当社がワンストップで対応し続ける。これが「賃貸に終わる」ということです。

    現在の管理戸数8,000戸から10,000戸への成長戦略はいかがでしょうか。

    永井様:この「賃貸に始まり、賃貸に終わる」という考え方は、お客様お一人おひとりに誠実に向き合い続けるための、当社の事業継続の根幹となっています。グループ会社で賃貸管理、家賃保証、不動産鑑定、建設まで展開しているのも、お客様をワンストップでサポートするための体制です。

    売買事業は、熊本地震からの復旧・復興を後押しするため、熊本健軍店を新たに出店して本格的に仲介業務を開始しました。おかげさまで、今では売却、購入、相続、資産運用など、幅広いご相談をいただけるようになり、多くのお取引に携わっています。

    顧客満足度を重視する企業文化

    スマイルバッジコンテストや接客コンテストなど、独自の取り組みについて教えてください。

    永井様:例えば、エイブル本部が主催する「スマイルバッジコンテスト」への参加を従業員に推奨しています。これは、売上や利益といった目に見える成果だけでなく、お客様の想いにどれだけ寄り添えたかという営業の「プロセス」を評価する制度で、顧客感動満足度(CIS)を測る指標になります。

    お客様からのアンケートで高評価を得た社員に「スマイルバッジ」が贈られ、獲得数の上位者が表彰されるのですが、当社のスタッフは毎年表彰を受けており、大変誇らしく思っています。

    また、社内でも毎年「接客コンテスト」を開催し、スキルアップを図っています。2021年の全国オンライン接客コンテストでは、当社の社員3名が優勝・準優勝・審査員特別賞を受賞するなど、若い世代が中心となって新しい取り組みに挑戦しています。

    TSMC効果と熊本の未来戦略

    TSMC進出による熊本の不動産市況への影響をどう捉えていますか。

    糸田様:ご存知の通り、世界的な半導体企業であるTSMCが熊本に進出したことによる経済効果は、約10兆円とも言われています。少子高齢化が進む日本において、熊本県では人口が微増に転じています。

    この変化は熊本の不動産市場にとって大きなチャンスですが、一方で適切な対応が必要だと考えています。

    一極集中リスクを避ける戦略について詳しく聞かせてください。

    糸田様:課題としては、TSMC周辺エリアへの一極集中リスクを避け、熊本市中心部の商業エリアや、その周辺の住環境が良好なエリアへも投資や開発を広げていく必要があると考えています。

    入居者様やオーナー様との長期的な関係を活かし、将来の住み替えや資産売却、新たな賃貸募集といったニーズをしっかりと捉え、「売買・賃貸・管理」の好循環をさらに本格的に回していきたいですね。

    DX推進と働き方改革への取り組み

    不動産業界のDXについてどのような考えをお持ちでしょうか。

    永井様:人口減少による人材不足に対応するため、あらゆる分野でデジタル化が必須だと考えています。特に不動産業界の人手不足は顕著であり、これまで以上にデジタル化を推進しなければなりません。

    賃貸事業では、広告、顧客対応、申込から契約、入退去管理まで、すでにDXに着手しています。もちろん、デジタル化で効率を上げる目的は、それによって生まれた時間をお客様やオーナー様と直接お会いする時間に充てるためです。

    この分野は待ったなしですから、GMOさんのような専門家の力もお借りしながら、取り組めることはどんどん進めていきます。すでに入居者様向けのCRMやオーナー様向けのアプリを導入し、紙媒体からの脱却や動画配信にも取り組んでいますが、従来のやり方に固執せず、常に新しいことに挑戦していく姿勢が大事だと考えています。

    女性活躍推進や働きやすい職場づくりについて教えてください。

    永井様:まず、経営の効率化を高め、無借金経営を継続することで、盤石な経営基盤を築いています。

    人材面では、女性社員の積極的な採用と管理職への登用を進めています。産休後の時短勤務制度や、男性社員の育休取得も積極的に推進しており、それぞれのキャリアに合わせた働き方をサポートしています。

    また、当社は9つの拠点がありますが、オンラインで朝礼やミーティングを行うなど、拠点数が多くても従業員間のコミュニケーションが円滑になるよう、特に意識して環境を整えています。

    創業50周年に向けた展望と地域貢献への想い

    お二人が影響を受けた経営哲学について聞かせてください。

    糸田様:私が大切にしてきた理念は、「人のために、喜んで、一生懸命、働くこと」。そして「社会のためにお役に立つことを通して、自らの幸福となす」。この想いを、永井社長が社是として社員一人ひとりに浸透させてくれています。影響を受けたものとしては「動の哲学」、そして「感謝」です。

    永井様:稲盛和夫氏の経営哲学、フィロソフィである「利他の心」です。会長の言葉にも通じますが、「人のために、喜んで、一生懸命、働く」ことを大切にしています。

    来年の創業50周年、そして100年企業を目指す展望をお聞かせください。

    糸田様:私も81歳になり、会社は来年で50年です。これからも熊本地所が100年企業となれるよう、精進していきたいですね。

    ▲糸田会長の誕生日の記念写真

    永井様:平成28年の熊本地震や、人吉球磨地方の豪雨災害を経験するたびに、私たちは生活の基盤である「住まい」を提供しているのだと、その使命を再認識させられます。住まいとは、暮らしそのものです。

    私たちはお部屋を紹介するだけでなく、お客様の暮らし、そしてその先の人生まで一緒に考えていくことが、本当の意味で長期的なお付き合いに繋がると信じています。

    熊本には、熊本城を中心とした豊かな歴史と文化があります。これらを活かしながら国内外との多文化交流を促進し、また震災の経験を教訓に、防災やインフラ整備を含めた安心・安全な街づくりに貢献していくことが、熊本地所の使命です。

    そのためにも、今後は売買事業の資産運用部門をさらに発展させていきたいと考えています。私たちの仕事は、家主様と、お部屋を探すお客様、その間に私たちが立つことで、初めて成り立ちます。責任は2倍ですが、その分「ありがとう」も2倍いただけます。

    これからも、困った時に一番に頼りにしていただける不動産会社として、不動産仲介事業を通して地元・熊本に貢献し、成長を続けていく所存です。

    まとめ

    創業49年を迎え、来年50周年の節目を控える熊本地所。糸田会長の「正直不動産」への強い信念と、永井社長の「利他の心」に基づく経営哲学が印象的でした。

     

    「賃貸に始まり、賃貸に終わる」という独自の循環戦略により、お客様のライフステージに寄り添い続ける姿勢。TSMC効果に沸く熊本で、一極集中リスクを見据えた冷静な分析と対応策。そして顧客満足度を重視する企業文化の構築。

     

    81歳を迎えた糸田会長から永井社長への世代交代を通じて、創業の理念を受け継ぎながらも時代に適応した成長を続ける同社。グループ全体70名の従業員とともに描く100年企業への道筋に、地域密着型不動産会社の新たなモデルケースを見ることができました。

    本記事取材のインタビュイー様

    熊本地所株式会社
    グループ代表取締役会長 糸田 健次 氏

    1976年に第一美術株式会社を創業後、1990年に不動産業に参入し熊本地所株式会社を設立。「正直不動産」を企業理念に掲げ、49年にわたり熊本の不動産業界をけん引。「人のために、喜んで、一生懸命、働く」ことを信条とし、今年81歳を迎えた現在も100年企業を目指した経営に携わる。

    取締役社長 永井 美智代 氏

    2004年に熊本地所株式会社入社。エイブルネットワーク加盟と同時期に入社し、20年間、売買部門を中心に会社の成長をけん引。稲盛和夫氏の「利他の心」を経営哲学とし、女性活躍推進やDX推進に積極的に取り組む。創業50周年を前に、さらなる成長戦略を描く。

    会社紹介

    熊本地所株式会社
    https://www.kumamoto-j.com/

    熊本地所株式会社は1976年創業、49年の歴史を誇る総合不動産会社です。「正直不動産」を企業理念に掲げ、エイブルネットワーク店として熊本県内9店舗を展開。現在8,000戸を超える管理実績を持ち、10,000戸達成を目標としています。売買・賃貸・管理のワンストップサービスと「賃貸に始まり、賃貸に終わる」循環戦略により、お客様のライフステージに寄り添った長期的な関係構築を重視。TSMC効果に沸く熊本で、地域一番店として100年企業を目指しています。

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