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【リーダーインタビュー】渡邉 宗明様|お客様、社員にとって「いい会社」とは何か。その答えを「上限なし」で求め、さらなる高みを目指す。

アイキャッチ_渡邉宗明 氏

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか? 高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに、今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。

今回お話を伺ったのは、茨城県つくば市に本社を構える桂不動産株式会社の代表取締役社長である渡邉 宗明様です。先代から事業を継ぎ、オーナー様への対応や社員のキャリアを見据えた体制づくりに着手。創業50周年を超えた今、DXも推進して次のステージを目指しています。入社の経緯や強化してきた取り組み、今後のビジョンなどについてお聞かせいただきました。

目次

    先輩の助言で家業を継ぐことに。実力を認めてもらおうと、売上に執着した新人時代。

    桂不動産株式会社に入社されるまでの経緯も含め、ご経歴をお聞かせください。

    少し真剣な顔をする渡邉社長

    私が入社する前、桂不動産は現会長である父が営んでいました。こうしたバックグラウンドもあり、大学3年生の時には宅地建物取引士の資格を取得していたのです。しかし、もともと家業を継ぐ気はなく、就職活動ではハウスメーカーや不動産会社を受けていました。 その中で不動産の売買に関心を寄せるようになり、新卒で三井不動産リアルティ株式会社に入社しました。

    面接では予期せぬ質問に苦戦し、「申し訳ございません。分かりません」ばかりで終わってしまいましたが、なぜか合格通知が届いたのです。そして最終面接に臨んだところ、面接官から「謝り方が良かったよ」と言われました。「この会社って面白い」と感心し、入社を決めました。

    桂不動産はすでに茨城県内に複数店舗を展開していたので、なるべく影響の少ない場所で働きたいと千葉エリアを志望しました。それでも入社式で、先輩方から突然「桂不動産のせがれだよね」と話しかけられたのが印象的でした。社長のせがれだからやれて当たり前という環境で働き始めました。

    三井不動産リアルティから実家の桂不動産に移られたきっかけは何ですか?

    三井不動産リアルティに入社して2年ほど経った時、懇意にしていた先輩が退職されました。自営業を営む先輩のお父様が亡くなられ、家業を継ぐために実家へ戻る必要があるとのことでした。 それから2〜3か月経ったある日、その先輩から「一緒に飲まないか」と連絡がありました。先輩は「父がどんな仕事をしていたのか分からず、何をすべきか見えない」と話していて、さらに「渡邉は三井で生きていくのか、実家に戻るのか?」と聞かれました。

    家業を継ぐことも考えていると答えると、いずれ戻るつもりなら親が健在なうちに戻り、一緒に仕事をやった方が良いと諭されました。背中を押されたというか、これが桂不動産に入ったきっかけです。 それから父へ入社志望の旨を伝えると、まず履歴書を作るよう言われました。そして書類を渡そうとすると、今度は郵送するよう言われたのです。

    実家と会社は隣接しているのですが、あえて郵便局から送ったのです。そして後日、顔見知りでもある採用担当者から面接の日時が伝えられました。一次面接を受け、父の二次面接を通過し、落ちる可能性を心配しながらも無事に採用されました。 三井時代には主に売買を経験していたので、桂不動産では入社当初から売買業務に携わり、勉強しながら数年にわたり勤めました。

    桂不動産に入社後、すぐに新しいアイデアを導入したり、改革を進めたりされたのでしょうか?

    横向きで話す渡邉社長

    入社してしばらくは「社長の息子が入ってきた」という先輩社員のプレッシャーもあり、とにかく数字を上げることしか考えていませんでした。誰よりも早く出社し、遅く帰宅して、とにかく必死で「実力で認めてもらおう」と取り組んでいたのを覚えています。まさしく数字に執着する毎日でしたね。

    その後、茨城県竜ケ崎市に支店を立ち上げるにあたり、私が赴任するよう命じられました。支店を運営する環境に置かれる中で、賃貸仲介、管理全般業務にも携わり、次第に会社経営についても考えるようになりました。父である会長(当時は社長)が築いてきた良い部分はもちろん、直すべき部分も見え始め「改善してみたい」という気持ちが芽生えてきたのです。

    コロナ禍による人口流入で恩恵も。今後は水戸市や千葉県内にも支店を増やし、社員にポジションを用意したい。

    現在の貴社の特徴を教えてください。

    桂不動産のサイトTOP 引用元:桂不動産グループサイト

    桂不動産は50年以上にわたり不動産業を営んできて、地元では老舗として知られるようになりました。また、全16支店のそれぞれに、賃貸仲介や管理、物件の仕入れ、不動産売買などの各担当社員を配置しているという、他の不動産会社に比べると珍しい体制を敷いています。 私は昔からオーナー様と交流する機会が多く、その中で「支店に行けば何でも相談できる環境を望んでいるということ」がこのような体制にした理由です。

    オーナー様が困っている時に「担当者は別のオフィスにいます」「分かる人間が不在です」では、何もお役に立てません。 だから、各支店だけでご相談を解決できる環境を作ったのです。社員教育も含めて大変な面もありますが、これが当社らしい特徴の一つです。

    店舗展開されている地域の特性はいかがですか? さらなるエリア拡大などもお考えでしょうか?

    茨城県の県南地域(つくば市や土浦市など)という場所柄なのか、土地をお持ちのオーナー様が多いです。最近は投資目的のお客様も増えてきましたが、所有する土地の相続対策として賃貸経営を始める方がほとんどです。 おかげさまで私たちは、茨城県南地域で店舗数が一番多い不動産会社に成長しました。

    この地域はすでに飽和状態であると感じ、社員も育ち、上のポジションを目指すようになってきたので、新しい役職を用意するため動いています。そのためには別エリアに店舗展開し、支店長や支店長代理などのポストを増やすことが重要です。 そこで最初に目を付けたのが千葉県流山市です。本社があるつくば市とは、つくばエクスプレス(TX)で繋がっており、さらに南下を目指せるとも考えています。

    また、桂不動産は茨城県の会社である以上、県庁所在地の水戸市にも支店を増やしました。水戸市は一つの不動産会社が複数店舗を展開しているという、つくば市によく似た市場で、うまく根付けば私たちも店舗展開できるのでないかと考えております。

    地図が描かれた桂不動産のWebサイト 引用元:桂不動産賃貸サイト

    加えて、地域法人の開拓をメインに、社宅関係のビジネスも手がけていこうと画策中です。国内でおよそ60社ある社宅代行会社にもアプローチしていきつつ、一方で代行会社に頼らない企業も多いので、地域法人をいかに開拓していくかも重要です。

    コロナ禍の今、都心から地方に移り住む人が多いと聞きます。貴社での影響などを教えてください。

    かなりプラスに作用していると思います。テレワークが推進される中、当社が展開するエリアからは必要に応じて都内に通勤できる上、同じ家賃でも広い部屋を確保でき、同等の間取りでも家賃を下げることが可能です。

    つくば市を筆頭に人の流入が大変顕著で、つくばみらい市、守谷市、土浦市、牛久市をはじめ、県南地域全般で人口流入の傾向にあります。 賃貸の契約件数が増えているのみならず、戸建てを購入する方も多く、2021年に比べると土地が3〜4割足りない状況です。現在は土地価格も賃料もインフレを起こしています。

    オーナー様のために入居戸数の確保を重視。選ばれる物件を目指しリフォーム料金の立て替えも決断。

    入居率が高い印象を受けるのですが、工夫されていることはございますか?

    身振り手振りで話す渡邉社長

    確かに、入居率は以前に比べると上がりましたが、全国の不動産業者が発表している97〜98%という数字には少し届いていません。 当社ではもちろん入居率も気にしますが、 入居戸数のほうがより重要な数字だと考えています。

    入居戸数が増えると管理収入などの収益が生まれ、同時にオーナー様の物件で入居が決まっていることも意味します。そのため社員には、「オーナー様が抱える空室を一つでも減らし、入居戸数を増やしていこう」と呼びかけています。

    その入居戸数を増やすため、特に強化している取り組みはありますか?

    入居戸数を増やそうと、オーナー様にリフォームや入居条件の緩和を無理に勧める業者もいます。これに対し私たちは、以前から「不動産業界こそ、もっと努力するべきでは」と感じてきました。 そこで当社では、オーナー様へ要望を出す前に社内で取り組むべきことを、何十項目にもわたりリスト化しています。全てクリアした場合のみ、リフォームなどを提案できる仕組みです。

    また、オーナー様からすると「せっかくリフォームしたのに誰も入らなかったらどうしよう……」という不安があります。そこで私たちも、「費用は当社が立て替えます。入居が決まったら毎月の賃料から少しずつ引かせてください」と覚悟を決め、3〜4年前から「楽リノ」という商品にしてリリースしています。オーナー様からは「そこまでやってくれるなら」とご理解いただき、かなり普及してきました。最近では毎月のようにリフォーム費用立て替えの社内稟議が上がってきます。

    他にもオーナー様向けに「オーナーズ倶楽部」を発刊されていますが、どのようなサービスでしょうか?

    会長が発行してきた「オーナーズ倶楽部」誌がベースになっています。媒体自体は私が監修しており、以下をテーマなどにして三百数十号まで発行されています。

    • 空室対策
    • 当社顧問税理士によるファイナンシャルプランニング
    • 法改正/優遇措置などの最新情報

    こうしてオーナー様に有益な話題を提供するとともに、私の代になってからは紙面を通じてセミナーを開催したり、各種イベントを行うようにもなりました。コロナ禍の今は、Zoomなどを利用したオンラインセミナーも開催しています。

    求めるのは「関わる人の誰もが、いつかお客様になる」という意識。不動産テックを用いた非接触型の業務も開始。

    会社を経営するにあたり、モットーとされていることを教えてください。

    笑顔で身振り手振りを使って話す渡邉社長

    地域密着を口にする企業は多いものの、明確なアイデアを持っている経営者はそう多くないのではないでしょうか。当社でも答えを探している最中ですが、私が日頃から社員に伝えているのは「関わる人の誰もが、いつかお客様になる」という意識の持ち方です。

    例えばオフィスに来る宅配業者の方にも、いつか不動産を探す際、もちろん当社に来ていただきたいです。「荷物は適当に置いて」と対応するのか「いつもありがとうございます。たまにはお茶でもいかがですか」と声をかけるのか、行動一つで全く変わってきます。だから、一番のモットーは「いつかお客様」です。この意識で地域密着企業として地元の皆さんと接するのが、当社ならではの強みだと感じています。

    あとは「人として」です。業務は次第にスキルアップしますが、お客様から問われるのは人間性だと思うのです。今後さまざまな不動産テックやAIを導入していく中で、最終的には「人として」の部分がますます重要になると思います。

    この点に関して、現在は社員向けに「社長通信」なるものを発信しています。私が先輩方から人間性について受けた指導、これまで見聞したことなどを伝えることで、10代や20代の社員が私と同じ年代になったときに、もっと上のレベルの人間になれるのではと期待してのことです。物事に対する考え方は今後も共有していきます。

    コロナが落ち着いた後、貴社が展開するエリアではどのような変化があるとお考えですか?

    今までは急激に人が流れ込んできました。勢いは緩やかになりながらも、この動きは今後も継続すると考えています。コロナ禍以前よりもプラスの状態を保てるでしょう。 戸建てを購入された方はおそらく都心に戻らず、テレワークへの移行に成功した企業はリアルな出社に戻すつもりはないでしょう。この流れに合わせて「GMO賃貸DX」のような不動産テックを活用しながら、お客様の利便性を考えた非接触型の業務も始めています。

    それよりも10年、20年先を見据えた際の人口減少が不安です。私たちの業務に与える影響は、コロナとは比較にならないでしょう。お客様のボリュームゾーンも変わり、どのように対応するかが鍵になります。 また、現在は外国人の流入はありませんが、いずれ活発になるでしょう。外国人社員を雇用し、反響が出せるホームページを作成するなど、そんな構想も練っています。

    次は100年企業へ。社員もお客様も、求めるものが「上限なし」の「いい会社」を目指す。

    今進めているDXの中で、特に注力しているのは何ですか?

    真剣な表情をする鈴木社長▲インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人

    現在は自社で組んでいる、RPA(Robotic Process Automation/ソフトウェアロボットなどを利用した業務の自動化)が効果を出しています。またExcelのマクロ機能も実用的で面白いですね。 エンジニアも採用していて、今後はますます事務的な作業を移行できると思います。不動産業界では、さまざまな法改正の甲斐あって電子申し込みや電子書面が盛んになりつつあるので、この分野も推進させたいと考えています。

    不動産テックに期待することをお聞かせください。

    私はどちらかというとリアルな仕事や世界を追い求めています。とはいえ、社員にしかできない業務、誰でもできる業務、さらにいえば人間でなく機械に任せられる業務もあります。今後はいろんな不動産テックが世の中に供給されると思うので、必要なものを積極的に取り入れ、生産性向上に努めたいです。

    現段階では、不動産テックを導入して「楽になった」という社員からの声はあまり聞こえてきません。運用フェーズに入るまでは既存の方法と並行する期間があり、なかにはデジタルに不得意な社員もいて、新しい仕組みに抵抗感を覚えてうまく回せないからでしょう。とはいえ、DXの流れについていかないと結果的に生き残れない可能性もあります。だから不動産テックを含め、先進技術を導入しなければとも感じています。

    2020年に創業50周年を迎えられました。今後も貴社が継続していく中で、どのような点を強化したいとお考えでしょうか?

    二人が会話している様子の写真

    会長からは「100年企業を目指しなさい」と、たすきを受け取りました。私の考えでは、同族経営はこれまでにして、今後は社員の中から代表を選んでいくつもりです。 1つの店舗を回せるようになった後、複数の店舗を運営できるエリア長という職種を新設し、役員候補の育成に入りました

    さらに、当社には住関連のグループ企業が7社あり、それぞれで役員や社長に就任してもらいたいという思いもあります。したがって現在は「社員の中から社長を生み出す」というのもビジョンの一つですね。

    なお、新卒採用の場合は賃貸仲介からスタートし、数年後に賃貸管理の営業も任せる方針です。双方を担当できるようになったら店長になり、店舗誘致など事業関連の仲介を覚え、遊休地のオーナー様に売却やアパート建設などを提案できるようになってもらいます。

    その先は支店長代理で、不動産の売買や資産活用の業務に特化し、そして支店長に上がります。ここまで、新卒から10年ほどでしょうか。賃貸仲介や不動産売買に特化して頑張りたい人など、専門職の道も用意しています。

    さまざまな道を選択できる環境が用意されていますが、社員の皆さんへメッセージがあればお聞かせください。

    永年勤続化が推進しきれておらず、社員の定着も目指したいですね。現在の平均勤続年数は8年程度と業界の中では高めですが、上場企業では10年超が当たり前です。十人十色の要望を叶えるのは難しいですが、やはり平均の勤続年数が長くなればなるほど比例するように会社の力も増します。だから「いかに長く働いてもらえるか」もポイントにしたいです。

    私の中では、店舗数や管理戸数は結果論で構わないと思っています。逆に具体的な数値を定めて目標にすると、本当はそれ以上を目指せるのに停滞してしまう気がします。だから私は「上限なし」が好きです。

    また、他の経営者からは笑われるのですが、社内ではよく「いい会社にしたい」と口にしています。社員にとって、オーナー様にとって「いい会社」の解釈はさまざまで、例えば社員からすると「給料が上がる」、オーナー様には「アプリ導入などで利便性が高くなる」などが相当するでしょう。しかし、いずれも数年経てば慣れてしまい、もっと上のレベルでの欲求が生じて到達しようとしますよね。

    つまり「いい会社=上限なし」ではないでしょうか。「現状に満足しないで高みを目指していこう」という社員へのメッセージでもあるので、どんなに笑われても「いい会社」にしていきます。

    まとめ

    つくば本社の前で正面向いて並ぶ笑顔の二人

    オーナー様にとって、従業員にとって「いい会社」とは何か……その答えを「上限なし」で求め、さらなる高みを目指す渡邉様。意欲的な姿を見せる一方、社内では「関わる人の誰もが、いつかお客様になる」と謙虚な姿勢を求めるなど、バランスの取り方が見事です。茨城県の県南エリアで最大規模の店舗数を展開するという、成功の理由もよく分かりました。

    本記事取材のインタビュイー様

    桂不動産株式会社 代表取締役社長
    渡邉 宗明 氏

    大学在学中に宅地建物取引士の資格を取得。大学卒業後、三井不動産リアルティ株式会社に入社。不動産売買を皮切りに不動産業界でのキャリアをスタートさせる。数年後家業である桂不動産株式会社に入社し、売買とともに賃貸仲介・管理など幅広い業務に携わる。

    2000年、創業30周年とともに竜ケ崎支店立ち上げに参画し、中核メンバーとして支店運営に携わる。2015年、創業45周年の節目に代表取締役社長に就任。茨城県県南地域で最多の支店を有する住提案総合企業としての地位を確立する。全16支店それぞれに賃貸管理・仲介、売買担当者を配置することにより支店内で課題を解決する仕組みを作り上げ、「理想をカタチに、総合提案」をモットーにサービスを展開。2020年に創業50年を迎え、100年企業を目指し全国スタンダードのトップ企業として提案力・組織力を高めるべくけん引している。

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