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【リーダーインタビュー】清水 剛様|目線は、常に未来へ。現場のニーズを活かした「不動産DXプラットフォーム」で、不動産業界に新風を巻き起こす。

清水 剛様アイキャッチ

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。

今回は株式会社アンビション DX ホールディングス(旧・株式会社AMBITION)の代表取締役社長である清水 剛 様です。総合不動産企業ながら業界全体のDX推進にも注力する同社に、取り組み内容や今後のビジョン、そして不動産DXにおける課題などについてお話いただきました。
(※インタビュー収録日:2021年9月6日)

目次

    目の前の“壁”は、意識しない。ベンチャーならではのパワーとアグレッシブさで、急速な成長を実現。

    まずは、御社を創立された経緯からお聞かせください。

     

    目の前の“壁”は、意識しない。ベンチャーならではのパワーとアグレッシブさで、急速な成長を実現。

    私は大学卒業後から不動産賃貸の営業に従事していました。営業部長までキャリアを積んだところで「自分の理想とする不動産会社を創りたい」と考えるようになりました。  

    不動産業界の労働集約的なビジネスモデルに疑問を感じていたこともあり、「不動産業界に関わるすべての領域で新風を巻き起こそう」と決意を固め、株式会社AMBITION(現・株式会社アンビション DX ホールディングス)を立ち上げたのです。

    創業が2007年でしたから、立ち上げて間もなくリーマンショックが発生したわけです。日本経済が一気に冷え込みましたが、幸いにも当社は大きな影響を受けることもなく、順調に業績を伸ばしていくことができました。  

    設立後すぐリーマンショックを経験したにもかかわらず約7年で、上場を果たされたと伺っています。そこまでの急成長を遂げられた秘訣や理由はどこにあるのでしょうか。

    創業間もない頃は、社会の潮流に左右されないほどのパワーを持っていますし、また当時、20~30名ほどの小さな組織でした。その分、小回りが効いたのも大きかったように思います。

    時流の変化に応じて柔軟に方向転換を図りながら、そして社員全員がアグレッシブに日々の売上を追いかけながら、我々ならではの強みを確立していきました。いわば、”少数精鋭の戦闘集団”のような組織だったのです。

    このようなベンチャーならではのパワーや柔軟性、貪欲な情熱が、会社の成長を大きく後押ししていたのでしょう。そう考えると、リーマンショックが創業時と重なったのは、組織を一致団結させるという意味において、むしろ幸いだったのかもしれません。

    ベンチャーから現在の規模に至るまでには、多くの壁を乗り越えて来たのでしょうか。

    ベンチャーから現在の規模に至るまでには、多くの壁を乗り越えて来たのでしょうか。

    矛盾しているように聞こえますが、正直なところ“壁は一度も感じたことがない”とも言えますし、逆に“いつも感じている”とも言えます。もちろん大変なこともありましたが、これまで壁というモノをあえて意識することはなかったです。

    常に大局的な視点を心掛け、“今”よりも“未来”を見据えて進めているので、目の前の壁はあまり気にならないのが本当のところです。個人的には、「これは大変だった」と振り返るのは、仕事を辞める時でも遅くはないのかな…と考えています。  

    “ストックビジネス”を主軸に据え、多角的に事業を展開。

    改めて、御社の事業内容をお聞かせください。

     “ストックビジネス”を主軸に据え、多角的に事業を展開。 引用元:株式会社アンビション DX ホールディングス

    株式会社AMBITION(現・株式会社アンビション DX ホールディングス)は、都心デザイナーズマンションの賃貸管理事業を中心に、開発・企画・仕入れ・仲介・販売・保険までをワンストップで提供する総合不動産事業を手掛けています。

    また、同時に「不動産DX」事業にも力を入れており、以下のようなDXプロダクトをご提供しています。  

    • 管理業務をRPA×BPO(業務代行)で効率化するツール
    • 新着物件の自動物出し・自動入力・反響予測が可能な、仲介向けAIツール
    • AI自動接客システム

      なお、一から不動産会社のDXをサポートする「DXコンサルタント」も実施しています。  

    多角的に事業展開をされていますが、何を重視しながら進めてきたのでしょうか?

    継続的に収益を積み上げられる「ストックビジネス」を主軸に据えることです。

    賃貸管理業はもちろん、保険事業もそうですね。単価はそう高くないものの、安定的な売上を確保できる事業できちんと基盤を固めれば、10年後20年後の収益まで算出できます。不動産DX事業におけるプロダクトも、基本的には売切りではく定期課金の「サブスクリプション方式」でご提供しています。

    もちろん不動産業界に身を置く以上、取引額が圧倒的に大きい花形の「開発・売買事業」も着手したく、展開しております。ただ、やはり長期戦略を立てて持続的な成長を実現するには、ストックビジネスが欠かせないと思います。  

    社名も新たに、不動産DXを推進。自社の事業変革から、業界全体の変革を実現したい。

    御社から見て、不動産業界におけるDXの現状はどのように写っていますか?

    社名も新たに、不動産DXを推進。自社の事業変革から、業界全体の変革を実現したい。▲ロボット・AIアウトソーシング事業を展開している、同社関連企業
    引用元:株式会社Re-Tech RaaS

    DXにおいては、不動産業界は他業界に大きく遅れを取っているように感じています。いまだに紙やFAXが普及していますし、テクノロジーに対する拒否反応を示す会社も少なくありません。

    例えば、以前弊社が管理物件に対する問い合わせ対応を電話からWebに変えた際は、問い合わせ・申し込みが10分の1に減りました。今でこそWebでの物件確認なども一般的になりましたが、当時はまだ珍しく、市場に受け入れられなかったです。しばらく経って“Webも電話もどちらも対応可”にしたところ、ようやく弊社への問い合わせや申し込みが元に戻りました。

    AIについても、なかには「現場の人間が培ってきた知見と直感が、AIに劣るわけはない」と否定される会社様も少なからずいます。確かにAIでは替えの利かない場面もありますが、任せられるところはAIに任せることで、生産性がはるかに高まります。

    このように、不動産業界はテクノロジーとの融合に消極的な傾向があるので、DXの実現は決して簡単ではありません。だからこそ我々は、引き続き総合不動産事業を展開しつつも、今後はこれまで以上にDX推進に尽力していこうと考えています。

    その決意を込め、2021年10月1日から社名も「株式会社アンビション DXホールディングス」に変更しました株式会社アンビション DXホールディングスのロゴ 引用元:株式会社アンビション DXホールディングス

    今後のDX推進における、具体的な方向性やビジョンをお聞かせください。

    まずは、AIやブロックチェーンといったテクノロジーやビッグデータを駆使して、自社の事業変革を進めていく予定です。また、スタートアップへの投資や外部企業との提携を強化しながら業容拡大を図りつつ、より一層幅広いDXプロダクトを生み出し続けていきます。

    そして将来的には、売買・賃貸管理・賃貸仲介といったさまざまな不動産ビジネスを一気通貫で効率化できる「不動産DXプラットフォーム」を構築して、不動産業界全体の変革を実現したいです。

    さらに、”顧客体験の進化”という観点では、例えばお部屋探しから契約までがすべてスマートフォンで、かつ1~2日で完結するような世界観を見据えています。  

    さまざまな不動産ビジネスにおけるDXを進めていく中でも、どの領域ではじめられる予定ですか?

    今のところは、やはり「賃貸業」だと考えています。賃貸は契約の単価が低いぶん、売上を上げるには数をこなす必要があります。また、業務自体も労働集約的で多くのマンパワーが求められるため、売買業よりもDXの必要性が高いのです。

    もちろん売買もDX化によって生産性は上がりますし、大きなメリットを享受できます。ただ賃貸の場合は、人手が必要な業務を現在のおよそ4割程度にまで減らせるはずです。

    DXは「既存事業のバリューUP」「新事業の創出」など、さまざまな変革を実現できるポテンシャルを内包しています。ですが、個人的にはそのプロセスにおいて“時間も労力も掛かる作業をなくせる”という点も、特にこの業界にとっては大きいと捉えています。

    ムダがなくなれば、余った人的リソースはより重要なコア業務に回せるため、仕事の質も働きやすさもはるかに向上するでしょう。そこに弊社のプロダクトが貢献できれば、大変嬉しいですね。  

    DXプロダクト開発のもとになるのは、現場の困りごと。現場から不動産業界を支えたい。

    DXプロダクト開発における、御社のこだわりをお聞かせください。

    DXプロダクト開発のもとになるのは、現場の困りごと。現場から不動産業界を支えたい。

    弊社は、”売るためのプロダクト”ではなく、”我々自身が不動産ビジネスの現場で抱えている課題・不満を解決するためのプロダクト”を開発し続けています。

    つまり、すべてのDXプロダクトが現場の声から誕生しているのです。

    そして、完成したプロダクトは実際に活用し、「これは使える」と”確信が持てたモノ”だけを世の中に送り出しています。  

    不動産の現場発信だからこそ、”痒いところに手が届く”プロダクトに仕上がるのですね。

    おっしゃるとおりです。現場の中でも特に仕事へ真摯に向き合い、業務を深掘りしている社員の声を反映させているため、表面的ではなくしっかりと本質を捉えたプロダクトに仕上がります。これからも、“現場が求める機能を過不足なく備えたモノ”を追及し続けていきます。

    なお、我々は各プロダクトに並々ならぬこだわりと情熱を注いでいるものの、特定の領域に特化してプロダクトの売上増加を狙おうとは考えていません。それよりも、すべての領域を見渡しながら現場のニーズを一つひとつ拾い上げ、足りていない部分を徐々に補っていくことを重視しています。

    我々の望みは、業界No.1のプロダクトを生み出すことではなく、現場から不動産業界を支えることです。  

    現場の方々からすると、大変心強いでしょうね。ちなみに、開発にはどのような体制を組んでいるのですか?

    企画や設計などは自社内で行い、開発はベトナムの子会社で行っています。この会社では、ベトナム・日本向けにWebシステムの受託開発事業を展開しています。

    IT人材の体制でいうと、国内に10名ほど、ベトナムには50名ほどが在籍。M&Aなどによって、このようにIT人材をしっかりと確保できたのも、我々の強みだと言えるかもしれません。今後も、より一層人材を充実させて、プロダクトを進化させていく予定です。

    また現在も次々と新たな機能やプロダクトを生み出している最中なので、ぜひご期待いただきたいです。  

    部屋探しは、営業担当も選べる時代へ。ユーザーと営業担当を繋ぐアプリ「ルムコン」。

    御社は2021年の春、新たにtoC向けのプロダクト「ルムコン」をリリースされました。この商品についてもお聞かせいただけますか?

    部屋探しは、営業担当も選べる時代へ。ユーザーと営業担当を繋ぐアプリ「ルムコン」。 引用元:ルムコン

    この商品は、お部屋探しユーザー様と不動産営業担当を繋ぐ、SNS型のマッチングアプリです。

    営業担当が部屋情報をタイムラインへ投稿することにより、ユーザー様は好みの部屋をタイムリーにキャッチアップできます。また、ユーザー様は気になる営業担当を見つけたらフォローしてメッセージを送信できるので、来店せずとも気軽にお部屋探しを依頼することが可能です。

    もちろん、営業担当も”簡単に顧客接点を獲得できる”というメリットを享受できます。

    何がきっかけで、アプリ開発に乗り出したのでしょうか。

    お部屋を探しているユーザー様のニーズと、不動産業界とのズレを感じたのがきっかけです。

    近年、ネットやSNSの普及により、ユーザー様にとっては”あらかじめさまざまな情報を得た上での買い物”が当たり前になってきました。しかし、「お部屋探し」でいうと、住みたい地域や物件の情報はネットで得られるものの、サポートしてくれる営業担当の情報は来店しないとわかりません。かつ、自分で担当者を選ぶこともできないのです。

    ユーザー様にとって、営業担当はいわば”物件探しの頼れるパートナー”であり、重要な存在です。だからこそ、「知識豊富なベテランが良い」「若くて機動力の高い方が良い」など、それぞれ希望があるはずなのに、自動的に割り振られてしまう。そこで、ユーザー様のニーズとのズレを是正しようと、アプリの開発をスタートしたわけです。

    ぜひ、新感覚のお部屋探しとしてお役立ていただきたいですね。

    今求められているのは、ニーズを反映させたシステム開発と、テック企業間で連携し合う姿勢。

    不動産テック・不動産DXにおいて、特に課題だと感じていらっしゃる領域はございますか?

    今求められているのは、ニーズを反映させたシステム開発と、テック企業間で連携し合う姿勢。

    インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人

    一つ挙げるなら、管理システムはもっと進化させるべきだと感じています。

    個人的には、管理システムに物件ごと、あるいは部屋ごとの資産価値を細かく分析・比較できるような機能などもあっていい、と思うのです。

    例えば、マンションの”最上階の角部屋“と“一階の角部屋”における収益性の差などをデータで出せたら便利ですよね。単純に、最上階の角部屋だから一階よりも収益性が高いとは言えませんから。

    このように、収益性に関する細かいデータを、それぞれが欲しい形でパッと出せるようになれば、現場はどれだけ楽になることでしょうか。

    実は、こういった機能を付与するのはそこまで難しいことではありません。入居率や修繕履歴などの細かなデータを広く集めれば、実現できます。それでも現在付与されていないのは、システムの開発側が現場のニーズを十分に把握できていないからです。

    このような部分に対して、弊社が不動産会社ならではの視点を活かして取り組んでいければ、と考えています。  

    “角部屋における収益性の差”、確かに多くのニーズがありそうですね。

    はい。本来このような収益性の比較には相当細かなデータが不可欠ですが、現状はデータよりも担当者の経験や直感、いわば固定観念に近いようなモノを基準に判断している不動産会社様も少なくありません。

    こういった会社様も、現場のニーズとテクノロジーがうまく融合したシステムがあれば、積極的に活用するのではないでしょうか。

    そのためにも開発側には、もっと現場に深く入り込み、声をきちんと拾いあげた上でのシステム設計・開発が求められると考えています。  

    不動産DXにおける課題では、基幹システムとのデータ連携も挙げられることが多いですよね。基幹システムが各社バラバラなので、各プロダクトをスムーズに導入できない。この辺りはどう見ていますか?

    不動産DXにおける課題では、基幹システムとのデータ連携も挙げられることが多いですよね。基幹システムが各社バラバラなので、各プロダクトをスムーズに導入できない。この辺りはどう見ていますか?

    そうですね。データ連携も、DX推進における根深い課題だと捉えています。

    各不動産テック企業がAPIの公開(他システムと機能を共有できる仕様にすること)を積極的に進めていけば、スムーズなデータ連携が実現するはずです。しかし実際は、自社システムの機能やデータを抱え込んでしまうテック企業も少なくありません。

    データを連携できず、手入力で移行せざるを得ないようでは、逆に不動産会社の業務負荷は増えてしまう。するとシステム導入そのものを諦める不動産会社も出てきてしまい、当然ながら業界のDXは滞るわけです。

    不動産テック企業には、「不動産業界全体を良くする」という一つの目標に向かって互いにオープンに連携・共有し合い、新たな価値を共創していくような姿勢を期待したいですね。

    DXで叶えたいのは、不動産業界全体の発展。他社と共に進化を遂げ、イノベーションを。

    最後に、今後のビジョンやこれから実現していきたいことを教えてください。

    我々がDX推進の先に見据えているのは、弊社の成長のみならず不動産業界全体の発展です。

    不動産業界が進化を遂げて繁栄すれば、自ずと弊社も豊かになっていく。結局は我々にはね返ってくるわけですが…まず何よりも、我々は不動産業界にここまで育ててもらった恩返しをしたい気持ちが大きいです。

    ですから、我々だけが潤うような仕組みではなく、他の不動産会社さんと一緒に変革・進化を遂げられる仕組みを構築したい。また、不動産テック企業に対しても、“ライバル”ではなく、”共にイノベーションを起こす同志”として捉えています。

    これからも、DX事業・不動産事業・保険事業の三つの柱を掛け合わせながら、”住まいの未来を創造し、出会った人すべてに夢をご提供”していきたいですね。それが創業以来変わらない、我々のAMBITION(大志)です。

    まとめ

    受付前にて鈴木社長と清水の2ショット

    不動産業界の進化と繁栄を目指し、ニーズを形に変えながら力強く歩みを進める清水社長。堅実な経営を貫きつつも挑戦を続けるそのバランス感覚と機動力は、業界の未来を創造する大きな力となることでしょう。

     

    本記事取材のインタビュイー様

    清水 剛 氏
    株式会社アンビション DX ホールディングス

    (旧・株式会社AMBITION)代表取締役社長。

    大学卒業後、大手賃貸不動産会社に勤務。不動産業界の労働集約的なビジネスモデルに違和感を抱き、不動産のあらゆる領域に新風を巻き起こそうと決意する。2007年9月株式会社AMBITIONを設立、代表取締役に就任。21年10月1日に株式会社アンビション DX ホールディングスへ社名を変更。
    現場の声から生まれるDXプロダクトを開発。住まいの未来を想像し、出会った人すべてに夢を提供するという"AMBITION”(大志)を掲げ、現場から不動産業界を支えるべく進化を続けている。

     

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