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【リーダーインタビュー】三好修様|社会問題と不動産ビジネスをつなぐ仕組みづくりとは

不動産業界はどう変わり、どこへ進んでいくのか?高い視座から業界全体を見渡し、明確なビジョンで業界をけん引しているリーダーに今後の不動産業界が進むべき道を示してもらう企画「リーダーインタビュー」。今回お話を伺ったのは、日本の不動産業界に多大な貢献をされており、福岡市に本社を構える株式会社三好不動産、三好修社長です。数々の社会問題に住宅を通じて真摯に取り組み、行政とも力を合わせて解決に導いていく。その独自のメソッドや仕組みづくりについて、GMO ReTech株式会社 代表取締役の鈴木がお話を伺いました。

目次

    親族が相次いで亡くなり、社長として覚悟を決めた43歳の秋。

    大学卒業後は、他社で不動産の営業マンをされていたそうですね。

    大学卒業後、積水ハウスの下関支店で営業をしていました。当時は父が三好不動産の社長で、私も将来は継ぐのが当然だと考えてはいました。ただし、経営者になるなら外の社会を経験することも必要です。

    不動産の飛び込み営業は、辞める人が多いきつい仕事です。しかし、営業を体で覚えるには最高の環境でした。成績はけっこう優秀で、毎月2~3棟は契約を取っていました。お客様のお宅に上がり込んだりもしましたよ。当時はそこまでやらないと売れない時代だったのです。

    社長に就任されたのは、どのようなきっかけだったのですか?

    親族が相次いで亡くなり、社長として覚悟を決めた43歳の秋。

    1997年1月、当時の専務だった叔父の三好靖夫が急逝しました。そして同年の年末に、今度は社長である三好寛が倒れて翌年の6月に逝去。相次ぐ不幸に見舞われる中、私が社長就任することになったのですが、直後に父である会長の三好勉が倒れ、7年後亡くなってしまいました。

    家族を失ったショックと同時に、まだ43歳の私が会社を再スタートさせないといけなくなり、まさに「やるしかない」状況での社長就任でした。

    故・三好勉会長から教えられたことで、印象深いものはありますか。

    嫌いな奴と酒を飲め」と教えられました。父は50歳で宅建協会の会長になり、一癖も二癖もある年長の方々とコミュニケーションを取らないといけない立場でした。その手段としての酒席ですから、要するにうまく人付き合いしろという教えだったのですが、強くない酒をガンガン飲んで二日酔いしていた父の姿を記憶しています。

    私もお酒は嫌いではありませんが、最近は健康優先で、ほどほどにして早く寝ます。今日も朝5時前に起床し、福岡市にある大濠(おおほり)公園をランニング。近所に住む孫を起こして屋上でラジオ体操してきました(笑)。

    「日管協」「全管協」の先輩方に、教えられ、育てられて今がある。

    長年携わっておられる「日管協」と「全管協」についてお聞かせください。

    日管協(日本賃貸住宅管理協会)では、10年ほど前に会長の職に就いていました。今は塩見さん(明和住販流通センター 代表取締役 塩見紀昭氏)が頑張っておられます。社長になって父の代わりに日管協や全管協(全国賃貸管理ビジネス協会)に参加するようになり、最初は正直「変な組織だな」と思いました。濃いんです、メンバーが(笑)。

    でも、そういう個性溢れる方々が面白いビジネスをやっておられて、先輩方から仕事を教わったおかげで、会社を潰さずここまで来れたと感謝しております。

    各協会で、いま取り組んでおられることはありますか?

    「日管協」「全管協」の先輩方に、教えられ、育てられて今がある。

    全管協では現在、九州支部長と副会長に加え、会員拡大の委員長もさせてもいただいています。最近力を入れているのがインターンシップです。近年の不動産業界では後継者不足でM&A(合併買収)が急増しており、その対策として導入しました。

    次世代を担う不動産業経営者のお子さんたちが学生のうちに、他の会社で管理業務を体験する。これにより、不動産業界にもっと興味を持ってもらい、家業を見直すきっかけにしたいというのが試みの趣旨です。

    三好不動産も、全国から不動産業の後継者を受け入れておられますね。

    東京、横浜、佐賀、長崎など、全国から後継者の方々に来ていただいています。例えば、前述の明和不動産会長、川口さんのご長男も弊社の姪浜支店で営業をされていました。また、他業種のテナントオーナー様のご子息様が不動産オーナー業に特化するにあたって勉強しに来られるケースもあります。

    父は常々「情報はオープンにしないといけない」と言っていました。全管協を立ち上げたのも、その精神からです。私も情報は惜しまず教え合うことが業界全体のメリットにつながると考えます。

    「空き家」を真剣に考える時代。一軒の空き家が大きなビジネスに。

    最近手がけられた、面白い事業がありましたらお聞かせください。

    全管協の高橋会長はアパマンショップの創設者として有名ですが、そのほかにも幅広いビジネスをされています。そのひとつに英語教育をしている保育園があり、私も埼玉県まで見学に行きました。英語保育のノウハウを、弊社のグループ会社「サンコーライフサポート」がやっている保育園で導入するためです。

    「空き家」を真剣に考える時代。一軒の空き家が大きなビジネスに。引用元:サンコーライフサポート

    この保育園は、熊本県の合志市という所にあるのですが、もともと閉鎖する保育園の建物を活用した高齢者施設から始まり、それが今では地域に根付いて従業員100人以上の大事業になっています。

    一軒の空き家が、どうしてそんなビッグビジネスなったのですか?

    廃園になる保育園の空き家有効利用として、デイサービスの高齢者施設に改装したのがきっかけです。その後、隣の土地に高齢者住宅を作りました。すると市長や市議会議員とのお付き合いが生まれ、企業主導型保育園、小中一貫校の学童保育など、次々と事業が発展していったのです。

    そして、地域で居住支援協議会を作ることになりました。現在はサンコーライフサポートが中心となって、市の外郭団体と一緒に活動しています。空き家の活用例としては、非常に成功したケースと言えるのではないでしょうか。

    空き家と相続の問題に、「居住支援協議会」でアプローチ。

    三好社長は、行政と手を組んだ事業にも注力されておられますね。

    一昨年から、元厚生労働事務次官の村木さん、認定NPO法人 抱樸(ほうぼく)の奥田理事長と一緒に「全国居住支援法人協議会」の共同代表をさせていただいています。 空き家と相続の問題に、「居住支援協議会」でアプローチ。 引用元:一般社団法人 全国居住支援法人協議会

    福岡を例にとっても、人口の集中に対して所得の格差や高齢者の独居など、さまざまな問題があるのです。それらの社会問題を改善するためには、きちんと利益を出して長期的に事業が回っていく「ソーシャルビジネス」の仕組みを作らないといけません。

    しかし、まだ建設や不動産に関する部局と福祉系の部局がしっかりと協業できていないのが現実です。どう効率的に稼働させるかが今後の課題ですが、そういった意味では、厚生労働省側のお二人と住宅が専門の私が手を取り合うのは理想的なタッグではないかと考えています。両サイドの意見をすり合わせて、地域の仕組みやネットワークを構築していきたいですね。

    具体的に、どのような空き家対策が有効だと思われますか?

    一例ですが、全国定借機構(全国定期借地借家権推進機構)の広島でやっている「空き家コンサルタント養成講座」は、面白い取り組みだと思います。

    固定資産税など国土交通省(国交省)が発行する請求書に「空き家の活用方法を学びませんか」というDMを同封すると、15%くらい反応があるようです。東京在住で広島に空き家を持っている人を対象に都内で説明会を行ったら、何十人も集まったと聞きました。

    そうやって積極的に動いている市があるわけですから、我々不動産業ももっと踏み込まないといけないと考えています。

    行政にはどのようなはたらきかけをしておられるのでしょうか。

    国交省で一年半かけて協議していた「住生活基本計画」が、この4月から再スタートしました。

    これには 「社会環境の変化」「居住社コミュニティ」「住宅ストック・産業」という3つの視点が掲げられており、その中の「高齢者が安心して暮らせるコミュニティ」という項目に、居住支援協議会や空き家の管理について明確に記載されています。また、補助金や国の視点なども定められており、我々不動産業としてはそこに照準を見定めて、組織を動かしていかないといけないと考えます。

    新たな住生活基本計画の概要画像 引用元:国土交通省

    先日、全管協の高橋会長と一緒に国交省 前住宅局長の伊藤明子さんのもとを訪問しました。伊藤さんは現在消費者庁の長官で、私が居住支援協議会に入った時の推薦者でもあります。その際、住居問題の解決に関しては「半分ボランティアだけど、半分ビジネスを組み立てていかないといけない」という結論に達しました。

    企業としては利益を出さないといけなのですが、利益だけを追求しても持続できません。社会貢献がないビジネスは通用しない時代なのです。

    今後は「相続支援コンサルタント」の需要が高まると予測。

    相続の問題に関しては、どのような改善策をお考えでしょうか。

    日管協の会長時代に「相続支援研究会」を立ち上げ、「相続支援コンサルタント」という資格を設けました。現在全国に約2,500人、弊社にも100人弱の資格者がおりますし、先述の熊本県合志市にも資格者が出向しています。

    相続支援コンサルタントは、不動産屋ではなく相続のプロとしてご相談を受けるのですが、必ず土地や空き家の問題が絡んできます。ですから、ビジネスの要素もしっかりあります。ここまでの体制を作り上げるのに弊社で10年、日管協で10年かかりました。

    相続セミナーは、どのような仕組みでやっていくご予定ですか。

    今後は「相続支援コンサルタント」の需要が高まると予測。

    10~20人のお客様へ6カ月間、毎月セミナーを開催します。地元企業の強みを生かして、地域のネットワークを構築することが重要です。

    福岡では大手6社が売買仲介のサイトを共同運営していて、弊社も西鉄不動産と組んでサイトを作っています。しかし、それは言わば「空中戦」にすぎません。ですから、弊社は地域社会に深く入り込んで「地上戦」で勝負をかけます。PTAや夏祭りなどにも積極的に参加し、セミナーの参加者がそこから広がっていくようにしています。

    なお、セミナー講師を務める弊社の社員はボランティアなのですが、成果にはきっちり報酬を支払います。そうすると自分の裁量で稼ごうという気になりますよね。

    日本人の寿命もどんどん長くなり、70歳までの長期採用義務もできましたけど、知識を磨いて経験を積んで、ボランティアをきっかけに収益へつなげられればずっと現役でいられるじゃないですか。社員に資格を取らせて講師にするのには、そんな目的や想いからでもあります。

    地域に貢献しながら、社員の将来設計に役立つ仕組みという事ですね。

    「2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107歳以上生きることが予測される」という学説があります。弊社の社員も、100歳までの人生設計はしっかり立てておいて欲しい。セミナーも生活の糧としての手段と考え、せっかく会社が場を与えているのだから、勉強するつもりでやらないとスキルは磨かれません。弊社には60歳を超えたプロがいますが、給与も歩合も下げません。稼いでくれる人に定年なんかないのです。

    もちろん、今後の高齢化社会に向けてビジネスの側面も計算しています。例えば100か所のセミナーで、年間に1,000件の契約が取れたと想定しましょう。1契約で50万円であれば5億円、100万円であれば10億円。三好不動産の売買仲介の規模は現在8億円ですから、それを超えてしまいます。

    10億の壁は、10年頑張れば突破できるんじゃないかと。そういう期待や喜びを感じることも仕事の原動力ですね。

    事務の作業をIT化し、自社だけでなく小規模な事業者もサポート。

    不動産テックや事業のIT化については、どのようにお考えですか?

    事務の作業をIT化し、自社だけでなく小規模な事業者もサポート。 引用元:全国賃貸管理サポートセンター

    不動産に関する事務を代行する「全国賃貸管理サポートセンター」というサービスを実施しています。特に地方の会社では事務員の確保が難しくなっているため、そういう事情がある会社から賃貸契約書などの事務を預かり、ロボットを導入して作業の大幅な効率化を図っています。

    小さな会社が自社でロボットを導入するのは難しいですが、弊社に集めることで機械化できるようになります。コールセンターも賃貸管理専用に設けており、ソフトによる音声自動入力で事務の省力化を実現しています。

    ITによる効率化は、早い段階で取り入れておられたということですね。

    私は大学時代、銀行でアルバイトをしていました。昔は通帳を作成した支店でないと出入金が行えませんでしたが、ちょうど私の働いていたころに磁気のついた通帳に代わり、ATMでお金をおろせるようになったのです。それまで銀行は正月も深夜まで残業するような業界でしたが、一気に業務が効率化されたのを覚えています。その実体験があるので、機械導入による効率化のメリットを身に染みて理解しているのです。

    オーナー様とは、お亡くなりになった後まで、とことんお付き合い。

    三好不動産ではオーナー様や入居者様に、どのようなサービスを実施していますか?

    オーナー様にはお誕生日のプレゼントを贈ります。市内であれば基本的には訪問し、障がい者雇用をしているグループ会社で作った品を進呈。また、還暦や古希といった節目には少し特別な品をご用意します。これは契約の多寡にかかわらず一律です。

    もちろんご不幸の際にもお葬式、一周忌、三周忌、七周忌などのタイミングでお花を贈らせていただきます。オーナー様あっての不動産業ですから、できる限りの感謝をお伝えしたいというのが三好不動産の考え方です。

    入居者様には、アンケートにお答えいただいた際にお礼を差し上げています。アンケート内容は私自らチェックし、目についたものは写真に撮って担当者にどうなっているのか追求します。なお、弊社ではアンケートに「普通」と回答があった場合はマイナス評価なんですよ。

    不動産業の基本はどれだけ喜んでもらえるかですから、「大変良い」でないといけません。これらの評価は集計して褒賞の基準にしています。

    三好不動産では、LGBTへの取り組みも推進されているそうですね。

    オーナー様とは、お亡くなりになった後まで、とことんお付き合い。
    引用元:株式会社三好不動産

    ゲイの知人から「部屋を借りづらい」という相談を受けたのがきっかけでした。すぐに社内の研修でその人に講演をしていただき、その場で手を挙げた営業マンがLGBT担当者になったのです。

    三好不動産の基本姿勢は「すべての人に快適な住環境を提供したい」。そこで、LGBT向け住宅ローンを楽天銀行と提携して作ったり、弊社主催のセミナーを開いて認定制度を設けている福岡市の担当者に講演していただいたりしています。

    社会問題への取り組みを、積極的に実践されているのが素晴らしいです。

    相続や空き家、LGBT、そして高齢者や外国人など、社会が抱える不動産の問題は少なくありません。そうした方々にも安心して暮らせる住まいを提供し、さらには社会問題とビジネスを結びつける仕組みをどう作るか。それが我々の使命であり、課題だと考えています。

    そのためには、行政を巻き込む大きな動きと、地域社会で地道に広げるネットワーク。どちらかだけではなく、二段構えで進めることが重要だというのが私の意見です。

    まとめ

    仕事の前に軽く10km走ってしまうという、タフな三好社長。現在は不動産信託会社の設立に向けて、申請中とのことです。不動産業の枠を超えて社会問題にアプローチするバイタリティは、地元福岡だけでなく業界全体にとっても大きな力となっています。 まとめ

    インタビュアー:GMO ReTech株式会社 代表取締役社長 鈴木明人(写真左)

     

    本記事取材のインタビュイー様

    三好 修 氏
    株式会社三好不動産 代表取締役社長
    1955年福岡市生まれ。西南学院大学法学部卒業。積水ハウス株式会社を経て1980年株式会社三好不動産入社。1998年代表取締役社長就任。公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会会長、公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 副会長、NPO法人九州定期借地借家権推進機構理事長、一般社団法人全国居住支援法人協議会共同代表・副会長、全国賃貸管理ビジネス協会副会長、全国賃貸管理ビジネス協会九州支部長。2010年日建設事業関係功労者等国土交通大臣表彰。2012年黄綬褒章受章。

     

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