2020
09.30

【2020年度版】不動産管理会社の新しいビジネスモデル

アンケート記事

さまざまな業界で「テック化」が加速しています。先端テクノロジーを大胆に取り入れることで旧来のビジネススタイルを進化させ、業界に革新をもたらすのです。この動きが遅れていた不動産業界も、いよいよテック化へのシフトを始めています。

ここでは、不動産テックの最先端を行くアメリカの事例を参考に、不動産業界のこれからを予測します。

関連記事:不動産管理会社のDX|不動産テックを分かりやすく解説

最先端を行く米国の不動産テック

最先端を行く米国の不動産テック

米国は不動産テックで世界の最先端を走っています。その動きに世界中の投資家が熱視線を送っています。動いている投資金額は5,000億円超ともいわれ、そのうちの5割以上が米不動産テック関連企業に流れ込んでいるといわれているのです。

米国が不動産テックをけん引できる背景には、情報の透明化があります。米国では、物件情報はMLS(Multiple Listing Service )と呼ばれる不動産データベース、日本でいうレインズ(REINS)から一般消費者でも取得可能です。仲介会社を経由する必要はあるものの、誰もがポータルサイトからアプローチでき、実質的にオープン化されています。
このことから、米国では不動産データのデジタル化を促進する土壌が整っているのです。

米国の不動産テックをけん引したのは、不動産ポータルサイトです。日本でいうSUUMOやLIFUL HOME‘Sにあたります。
米国では、Zillowが不動産ポータルサイトとして圧倒的な地位を築いています。Zillowでの掲載物件数は1億件を超え、膨大な情報量で一般ユーザーの物件探しをサポートしています。

ポータルサイトがけん引した不動作業界のテック化

出典:Zillow

Zillowには物件価格などを査定する独自の指標が掲載されていて、リアルで物件を探す多くのユーザーをオンラインに引き込みました。
こうして、物件探しのスタンダードがインターネットに移行したことで、不動産業のアナログイメージも払しょくされ、テック化が加速しました。物件探しから始まったテック化の波は、賃貸や売買、さらに不動産管理など従来の不動産業をも飲み込みました。そして、2010年前後にエアービアンドビー、WeWorkなど新興の不動産テック企業の勃興へとつながったのです。

新規参入組も含めて一気にプレイヤーが増大し、従来の不動産の概念を変える業態の企業も数多く誕生し、不動産市場そのものが拡大しました

淘汰が進み新たなステージへ進む米・不動産テック業界

2018年前後から規模の拡大を狙う不動産テック企業が、活発にM&Aを行うなどで離合集散を繰り返しながら、淘汰が進んでいきます。より資本力に勝る企業が総合型へと向かい、トップのポータルサイトがその集客力を活かし、自ら物件を買い取って売買までするようになっています。

こうした動きは、不動産業務のテック化を加速しました。米国の不動産テックはいよいよ既存の不動産業界のあらゆる業務にまで波及し、かつての不動産業務のスタイルを完全に飲み込もうとしています。

米国における不動産テックのビジネスモデル

米国における不動産テックのビジネスモデル

不動産テックの最先端をゆく米国のなかでも、テクノロジーによって新しいビジネスモデルを作り上げた不動産業の例を紹介します。

住宅の売買プロセスを簡素化(OPENDOOR)

出典:OPENDOOR

OPENDOORは、オンラインで物件を買い取り再販することを主軸とする不動産テック企業です。物件を売りたい人がオンライン上で情報を入力すると、AIが瞬時に査定し、商談がまとまれば買い取って修繕・改築して再販売するビジネスモデルです。

AIを活用することで査定がスピーディーな上に、数日以内に現金で買い取ってもらえることから、物件を売りたいユーザーがあっという間に拡大しました。
とはいえ、人生最大の買い物といわれる物件売買が、まるでメルカリでの売買のような感覚で簡単に取引されることに不安を覚える人もいます。そこで同社は、30日以内の全額返金(契約履行の手数料を除く)と2年間の修繕保証という業界の常識を超越した手厚い保証で、リスクを払しょくしています。
買い手に対しても、物件の内覧を仲介業者も予約をせずにできるシステムを採用しています。

このように、テクノロジーを最大限に活用することで不動産売買を安全で身近なものにしています。
街の不動産屋で売却の相談をし、それからチラシなどを撒いて、買い手を募り、内覧会を開いて、売買契約を目指すかつてのスタイルと比べると、まさにテック化を象徴する先進的なスタイルです。今後の不動産業界のひとつのスタンダードとして期待される、わかりやすいモデルといえるでしょう。

しかし、OPENDOORの弱点とされるのは、集客力です。ビジネスモデルは優れていても、集客面では不動産ポータルサイトに及びません。
資本力があるポータルサイトが自ら物件を仕入れて売買に乗り出せば、強力なライバルとなります。現に米国では、ポータルサイトが売買にも進出する動きがあり、不動産テック強者の争いは激化しています。

手動による売却価格の見積もり(BOWERY VALUATION)

出典:BOWERY VALUATION

BOWERY VALUATIONは、事業用不動産の評価レポートサービスです。膨大な手間がかかる不動産の評価を税務や土地、立地などの情報をネット上などから吸い上げるなどして自動化しています。スピードと精緻さを備えた評価を実現し、査定業務に革新をもたらしています。

査定者が必要な情報を探す際には、公的なデータを自動でクローリングして取得します。顧客のレポート作成においても、自然言語処理によって簡単な作業だけで済むようサポートすることで、所要時間を大幅に削減します。

不動産エージェントの業務を劇的に効率化するサービスのニーズは、今後一層高まることは確実で、投資家の注目度も高まっています。なによりも、従来の不動産業務を圧縮することで、本来営業マンなどが割くべき時間が生み出されることが、同社のようなサービスの大きな存在価値であり、不動産業界のテック化を健全に推進する力となり得ます。

管理プロセス全体のデジタル化(RENTBERRY)

出典:RENTBERRY

RENTBERRYは、ブロックチェーン技術とスマートコントラクトを活用することで、分散型の不動産賃貸サービスを提供するプラットフォームです。

ブロックチェーン技術を活用したサービスは、各領域で着々と広がっています。RENTBERRYの最大の特徴は、仲介を必要とせず、売り手と買い手が直接取引をし、契約まで完結できることです。不動産賃貸でいえば、借り手と貸主の直接のやりとりがオンライン上だけで可能になるのです。

したがって、RENTBERRYのプラットフォーム上では、借り手が気に入った物件を見つければ、マッチングサイトのように貸主と直接やりとりします。
これまでなら、サイトで物件探しをして仲介業者に連絡して予約、現地で内見をして確定、審査を経て契約というプロセスが必要でした。
しかし、ブロックチェーンとスマートコントラクトを活用する同サービスでは、これらのプロセスは全て不要になるのです。

手間の削減は賃貸契約に限りません。ブロックチェーンとスマートコントラクトを活用することで、いずれは公共料金の支払いなど、借り手の生活に関する各種契約も一元管理することが可能になるかもしれません。

不動産管理業務における新しいビジネスモデルの可能性

不動産管理業務における新しいビジネスモデルの可能性

不動産業の管理業務は、アナログでは手間のかかるものが多く、いい物件を開拓して顧客に紹介する本来注力すべき業務に、時間を割きづらいのが現実です。これはテック化によって劇的に改善できるため、ここ最近テックの波が押し寄せています。

不動産管理会社のビジネスモデルの展望

不動産売買を軸にした不動産テック企業の勢いが増している一方、旧来からの不動産管理会社はテック化から後れを取っていることは否めません。とはいえ、独自ノウハウを持つ不動産管理会社の役割がなくなることはなく、むしろテック化に適応した進化ができるでしょう。

たとえば、クレーム対応ならデータを活用することで、より効率的な対処が可能になるでしょう。審査や物件メンテンナンスも同様です。IoTや画像認識技術などを活用するなどで、早期の物件の傷み発見が可能になり、修繕コストの最小化も実現できます。
AI活用で業務効率を高めることで対応できる物件数を増やし、サービス品質を高めることで不動産業のイノベーションを実現し、次のフェーズへ押し上げることも可能になります。

情報の非対称によって、一般消費者から利益を搾り取るビジネスモデルではもはや生き残れないでしょう。むしろ、一般消費者の利便性を最大限に高め、自らの業務も可能な限り効率化することで、スピードと正確性の高いサービスを提供し、信頼とともに利益を積み上げていくことが求められます。

不動産テックで管理業務(PM)の効率化を実現

物件価値においては、周辺の教育環境や地価、取引履歴などからAI分析によってより精緻に正確に予測でき、不動産管理業務に付加価値をもたらすことができます。逆にいえば、従来の不動産管理業務では十分にケアできなかった部分をテック化で強化することで、選ばれる不動産管理会社としての価値を高めることが可能になるでしょう。

これまでの不動産の管理業務は、雑用に近いものも少なくありませんでした。帯同しての内見や物件の査定の資料集めなどは、数が多くなれば膨大な手間と時間を費やすことになります。不動産の管理業務といっても、大半の時間は直接的に顧客満足度につなげるために使えていかなかったのです。

不動産テックは、これまで奪われていた本来顧客に使うべき時間を、テクノロジーの活用で取り戻すことで、本当に価値ある業務に集中できる環境をつくり出す進化でもあるのです。

関連記事:不動産テックによる不動産管理会社の業務効率化とは

PM(プロパティマネジメント)の業務領域

PMの業務領域は下記のように多岐にわたります。

  • サブリース
  • 不動産売買
  • 物件仲介
  • 審査
  • 賃貸借のプロセス管理とその実行
  • 各種工事の施工
  • クレーム処理
  • 物件のメンテナンス

物件オーナや貸主はこうした業務にまつわる処理に忙殺されながら、業務を遂行しています。しかし、こうした業務をアウトソーシングしたり、テクノロジーを活用したりすることで、本来取り組むべき業務に時間を割くことが可能になるワケです。

総合型と特化型の2極化へ

業務効率化から始まった米国の不動産業界テック化は、不動産を介した新ビジネスの勃興を経て、総合型と特化型との2極化しています。

  • ポータルサイトでの集客から売買、保証など、資本力のある企業がM&Aを繰り返して拡大する総合型
  • 専門性を強めながら独自のポジションを築く特化型

そうしたなか、従来からの不動産管理会社もテック化によって生き残りを図ろうとしています。テクノロジーによって売買が身近になったとはいえ、居住後の物件管理は人間がやるしかありません。とくに、物件の価値を高める役割や顧客フォローなどは、独自ノウハウを持つ不動産管理会社にまだ優位性があります。
ただし、独自ノウハウを活かすにも、テック化を進めたうえで業務を見直し、強みをテクノロジーの活用で進化させる必要があります。

新規参入組との離合集散の先にある市場の拡張

テック化を進める企業努力は、テック化が入り込む余地そのものであり、今後不動産業の劇的な効率化と同時に、新たなビジネスを連鎖的に創出することにもなるでしょう。不動産業務が限りなく効率化されていく先には、不動産企業と新規参入の不動産テック企業の融合があり、雪だるま式に不動産業界全体の市場拡大という構図が浮かび上がってきます。

まとめ

旧来の不動産業にとって、テック化やそれを推進する企業は “敵”という見方も少なくありませんでした。しかしむしろ、頭打ちだった業界のパイを劇的に拡大する存在であり、不動産の流通をより身近で円滑にするものでもあり、さらなる発展には不可欠なムーブメントなのです。

記事を監修した人

小泉寿洋

小泉寿洋
家業の眼鏡店経営、訪問販売会社立ち上げ・運営、司法書士助手等の仕事を経て、1部上場グループに所属する管理会社で賃貸仲介、賃貸管理部門で社員から管理職まで約15年程経験。その後、空室対策・シニアの住まいに関する総合サービス・不動産・リノベーション工事の会社を仲間と起業・経営。現在はフリーランスで賃貸経営や終活に関してのコンサルティングやアドバイスを行う。



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